事業承継

後継者の分類

誰(後継者)に事業を承継するのかが問題になります。

後継者の候補を2種類に分けて説明します。
一つ目は身内に事業を承継するケース(親族への事業承継)、二つ目は第三者に事業を承継(売却・譲渡)するケース(第三者への事業承継)です。 この後継者の分類は相続の対象者なのかなど重要な分類になります。

事業主体の分類

後継者の分類(親族か第三者か)以外に注意しなければならない分類があります。 誰が事業を行っているか(事業の主体)という分類です。 クリニック(事業)が個人経営なのか、医療法人なのかということです。 なぜ重要なのかというと、事業で使用している財産、例えば土地や建物、医療用器機の所有権に係わってくるからです。 個人経営であれば個人所有のものであり相続の対象となります。 医療法人で所有しているものであればその財産自体は相続の対象となりませんが、医療法人への出資金が相続の対象となります。

親族への事業承継
Business Succession to the Relatives

親族への事業承継のポイント

最も一般的な事業承継ですが、時間をかけた事前の対策(相続対策など)が必要になります。
また事前の対策をするのとしないのではかなり違いがでるケースが多い。

クリニックが個人経営の場合

相続になった時、原則として亡くなった方の所有する財産は、相続人への分割対象となります。 したがって、事業を継続するために必要な事業用財産も分割対象に含まれることになります。 後継者以外の相続人に分割されると事業承継できない場合も想定されます。 永続的な医療の継続という社会的使命のためにも、生前贈与や遺言等事前対策が大切になります。


クリニックが医療法人の場合

医療法人を事業承継する場合考えなくていけないのは、医療法人は所有と経営が分離しているため、 出資持分(財産権)の承継と理事長職(経営権)の承継が必要になります。

出資持分(財産権)の承継とは、医療法人に出資した持分相当を譲渡、贈与、相続によって親族に承継することです。 現金や土地、建物等を出資して医療法人を設立した場合、その出資した持分は相続税の対象財産になります。 通常この出資持分は、医療法54条で配当禁止されていることもあり、出資当初よりかなり財産価値が増加しているケースが想定されます。 そこで事前対策を行うことにより出資持分の評価の引き下げが可能かどうかを検討していく必要があります。

次に理事長職(経営権)の承継については、後継者である親族に理事長職を譲る(理事長の交代)ことです。社員総会や理事会等きちんとした諸手続を経る必要があります。 ここで注意したいのは役員職である理事(長)職と合わせて、医療法人の最高決議機関である社員総会の構成員である社員の立場の承継も忘れずに行うことです。

第三者への事業承継
Business Succession to a Third Party

第三者への事業承継のポイント

後継者がいない場合など第三者に事業承継するケースが増えています。
後継者(第三者)となる側も新規開業に比べ、当初から実数字としての患者数が見込め、また設備資金を低く抑えることができる等メリットがあります。

クリニックが個人経営の場合

事業承継の対象となる財産(クリニックの土地・建物、医療用器械、医薬品在庫、信用、患者等)を後継者である第三者にいくらで売却するのか。 クリニックの土地・建物は賃貸とし他の財産は売却するのかなど色々なケースが考えられます。賃貸の場合には、近隣の不動産相場等を参考にして契約金額を決定していきます。 敷金や保証金をどのようにするのか等決めていく必要があります。売買の場合には、原則として個々の財産ごとに売却価格(譲渡価格)を決めていきますが、 全体として考えたときの信用等の付加価値部分(営業権)をどのように評価するかなどなかなか簡単にいきません。したがって、当事者間でじっくりと余裕をもって話し合うことが必要です。

クリニックが医療法人の場合

事業で必要な財産は医療法人所有になりますので、この場合には現理事長の医療法人に対する出資持分をどのように承継(売却・譲渡)するのかが問題になります。 出資持分をいくらで評価するのか(売却・譲渡価格はいくらか)、その金額を決めるには医療法人が現在どれくらいの価値があるのかを算出しなければなりません。 これはかなり難しい作業となります。また現理事長は医療法人を退社することになるため、退職金をいくらにするかによっても出資持分の金額が変動します。